くみジャムシリーズ「あなたに会えてよかった」

こんにちは、水産系シンガーソングライター・ユニットくじら座ピアノボーカル担当の牧野くみです。前回に引き続き、「すごいな!」と思った楽曲の進行を分析してみたいと思います。人気番組「関ジャム 完全燃SHOW」をイメージしています。今回は、小泉今日子さんの「あなたに会えてよかった」についてです。
以前リクエストを頂いたことがあったので、自分でメロ譜とコードを見ながら、ピアノで伴奏しながら歌ってみて驚きました。まずイントロから度肝を抜かれました。イントロがDメロ始まりなんです。「思い出が 星になる・・・」の部分です。Dメロとは大サビとも言われ、Aメロ、Bメロ、サビ(Cメロ)を2番まで繰り返した後に来ることが多く、そもそもDメロが存在しない曲もたくさんあるので、「イントロにこの部分が来るんだ!!」と衝撃を受けました。そして歌始まりは「サヨナラさえ上手に言えなかった~」とサビからです。サビ始まりなだけでも相当なインパクトになりますが、その前にDメロイントロがあるので、序盤で既に盛り沢山です。さらにDメロ、サビ共に共通している特徴が、分数コードの多さではないかと考えます。ざっくり言うと、コード(和音)には「ルート」と呼ばれる”根音”というものがあるのですが、ルート音に本来のコードの根音ではないものが多用されています。
このような構造により、歌詞や言葉の意味、歌唱力や表現力に加え、複雑でどこか切なく割り切れない想いのようなものをより強く表現しているように思います。Aメロは比較的穏やかに進みつつ、Bメロで分数コードは再び現れ、Bメロではさらに一時転調もしています。揺れる気持ちが見事に表現されていると言えるでしょう。このような楽曲に触れると、想いを表現するのはボーカルの力や歌詞はもちろんのこと、楽曲そのものの力もとても大きいのだと考えさせられます。これからも新旧たくさんの曲と積極的に出会うよう心がけ、自身も様々な表現にチャレンジしてゆきたいです。
(Mマガジン8月号掲載より)