●音友レコード倶楽部Report / 2023年2月コンサートの報告

2月23日(木)の天皇誕生日のこの日は気候も暖かで、春の予感がする
Jazz Date & Light Musicは絶好のレコード鑑賞日和となりました。

■Light Music
天才少年スティーヴ・ウィンウッドが率いたロックバンド、『トラフィック』
今回取り上げたのは1960年代後半から1970年代前半を中心に英国で活動していた「トラフィック」というロックグループです。昔、FMラジオで“グラッド”というかっこ良いインストメンタル曲が流れていた事から聞く様になりました。英国特有の様々なジャンルの音楽(ブリテイッシュ・トラッド・フォーク、ジャズ、R&B等)とロックとの融合を試みる実験的バンドでありました。若き日から稀にみる才能の持ち主であるスティーヴ・ウィンウッド(ボーカル、オルガン、ギター)が在籍していた事でも知られています。彼が作曲したナンバーはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズを始め、多くのミュージシヤンに取り上げられ、音楽界に多大な影響を与えています。また、彼は偉大なギターリストであるエリック・クラプトンとブラインド・フェイスというバンドを結成したり、クロスロード・ギター・フェスティバル等で共演したりしています。結成当初のメンバーは他にデイヴ・メイソン(ギター、ベース)、ジム・キャパルディ(ドラム)、クリス・ウッド(サックス、フルート)が在籍していました。その後、主要メンバーであるウィンウッド、キャパルディ、ウッド以外はメンバーチェンジを繰り返し、「When The Eagle Flies」(写真1)など9枚のアルバムを発表し、1974年に一旦解散します。本日聴いていただいたのはウィンウッド(「Mr. Fantasy」(写真2)よりサイケデリックで当時としてはファンタジックなサウンドである“ディア・ミスター・ファンタジー”)、メイソン(「Traffic」(写真3)より2つの単純なコードで構成され、メイソン自身がその後もセルフ・カバーで何回かとりあげている“フィーリン・オールライト?”)、キャパルディ(「The Low Spark Of High Heeled Boys」(写真4)よりフロントマンであったキャパルディ特有のダミ声が魅力の“ライト・アップ・オア・リーヴ・ミー・アローン”)が三者三様でリード・ボーカルをとっている曲等を聴いてもらいました。(藤田順治 記)

■Jazz Date
『名アレンジャー、ネルソン・リドルの世界』
この日は気候も暖かで、春の予感がする絶好のレコード鑑賞日和(?)となりました。DJタイム第二部、Jazz Dateは名アレンジャー、ネルソン・リドルの特集を筆者のDJお届けしました。スイング時代にトロンボーン奏者兼アレンジャーとしていくつかのバンドで活躍後、ナット・キング・コールのアレンジを手掛けたことを契機にキャピトル・レコードの専属になりました。ネルソン・リドルを語る時に切っても切れないのがフランク・シナトラです。シナトラのヒット曲の多くはリドルのアレンジによるものが多く、その代表曲、シナトラの「Songs for Swingin’ Lovers!」(写真)より“アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン”。この曲はシナトラのシグネチャーソングでもあり、彼のヒット曲のなかでも人気No.1に選ばれた曲でもあります。
リドルは’80年代まで活躍し、晩年のリンダ・ロンシュタットとのスタンダード集3部作は米国内だけで800万枚を売り上げました。最終3作目の「For Sentimental Reasons」(写真)より“フォー・センチメンタル・リーズンズ”。この3部作はリンダの新境地を開きました。

 

1963年の弘田三枝子のアルバム「弘田三枝子スタンダードを唄う」(写真)より、リドルのアレンジでレコーディングした“イッツ・ア・シン・トゥ・テル・ア・ライ”(嘘は罪)はレア音源。Jazz Date最後は世界初と思われるリドルのカラオケレコード「Sing A Song WithRiddle」(写真)で締めくくりました。

続く持ち寄りタイムでは「Mマガジン」でコラムを連載されているジャズシンガーの星乃けいさんのアルバムからスタートしました。けいさんは10代でポップシンガーとしてデビューし、後にジャズシンガーに転向、2009年には世界一周の豪華客船にてパナマからサンフランシスコまでのメインショーを務めたり、現在はジャズクラブ、ジャズフェスティバル、コンサート、ホテル等に出演し、精力的に活動されているベテランシンガーです。この日は2005年リリースの1stアルバム「NEARNESS OF YOU」(写真)より“デイ・バイ・デイ”他、5曲を、続く2ndアルバム「In a SentimentalMood」より“イン・ア・センチメンタル・ムード”他、4曲を鑑賞しました。アップテンポの曲からバラードまで、けいさんの情感たっぷりのヴォーカルが楽しめました。筆者はリッチなストリングスをバックにヴァースからしっとりと歌い上げた、1stアルバムのタイトル曲“ニアネス・オブ・ユー”に惹かれました。その他、ヴォーカル繋がりで美空ひばりのジャズアルバムから“ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”、雪村いづみの“ア・ガイ・イズ・ア・ガイ”など、今回も良質且つ充実した時間を過ごせました。
またYouTubeでクリス・ボッティ(Tp)とボストン・ポップス・オーケストラのライヴコンサート(Chris Botti In Boston)に、キャサリン・マクフィーがゲスト出演して、このフランク・シナトラの名曲“アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン”をカヴァーし唄っているのもご機嫌です。
(大場アキヒロ記)